「せっかくエントリーしたマラソン大会だけど、体調が優れない」「足に痛みがあって走れるか不安」と悩んでいませんか?無理をして走るべきか、それともDNSを選ぶべきか、ランナーなら誰もが一度は直面する難しい選択です。
この記事では、マラソン用語であるDNSの意味をわかりやすく解説しながら、欠場を決めるための具体的な判断基準をお伝えします。自分の体を守り、長く走り続けるために必要な知識を身につけていきましょう。
マラソン用語のDNSとは?
DNSという言葉を初めて聞いたとき、少し専門的で難しそうに感じるかもしれません。でも、これはとても単純な意味を持つ言葉です。
まずは、この言葉が何を指しているのか、そしてランナーにとってどんな意味を持つのかを見ていきましょう。
1. 「Did Not Start」の略でスタートしないこと
DNSとは、「Did Not Start(ディド・ノット・スタート)」の頭文字をとった言葉です。直訳すると「スタートしなかった」という意味になります。
つまり、エントリーはしていたけれど、当日のスタートラインには立たなかった状態のことを指します。理由は怪我や病気、急用など様々ですが、結果としてレースに参加しなかったことは全てDNSと呼ばれます。
2. マラソン大会の記録証にはどう書かれる?
もし大会を欠場した場合、後日確認できるWEB記録証やリザルト(結果表)にはどのように表示されるのでしょうか。
多くの大会では、名前の横やタイムの欄に「DNS」とだけ記載されます。決して「欠席」や「不参加」といった日本語で書かれるわけではないので、少し目立つかもしれません。
3. 市民ランナーにはよくある選択肢
「DNSなんてかっこ悪い」と思ってしまうかもしれませんが、実は市民ランナーの世界では決して珍しいことではありません。
仕事が忙しくて練習できなかったり、家族の都合がつかなくなったりすることは誰にでもあります。DNSは「今回は走らない」という一つの立派な意思表示なのです。
DNFやDQとの違い
マラソンの結果表を見ていると、DNS以外にも似たようなアルファベット3文字を見かけることがあります。
これらは全て異なる意味を持っています。それぞれの違いを整理して、用語を正しく理解しておきましょう。
以下の表にそれぞれの違いをまとめました。
| 用語 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| DNS | Did Not Start | スタート前に棄権すること |
| DNF | Did Not Finish | 途中で走るのをやめること |
| DQ | Disqualified | 失格になること |
1. 途中で走るのをやめるDNF(Did Not Finish)
DNFは「Did Not Finish(ディド・ノット・フィニッシュ)」の略です。スタートはしたものの、ゴールまでたどり着けなかった場合に使われます。
途中で関門時間に間に合わなかったり、足が痛くてリタイアしたりした場合がこれに当たります。「途中棄権」と呼ばれることも多いですね。
2. ルール違反などで失格になるDQ(Disqualified)
DQは「Disqualified(ディスクオリファイド)」の略で、失格を意味します。これは自分の意思とは関係なく、ルール違反によって記録が認められないケースです。
例えば、指定されたコースをショートカットしてしまったり、禁止されている伴走行為があったりした場合に適用されます。
3. スタートラインを超えたかどうかが分かれ目
DNSとDNFの最大の違いは、「スタートラインを踏んだかどうか」にあります。
号砲が鳴ってもスタートラインを超えていなければDNS、一度でも超えて走り出していればDNFになります。この境界線を知っておくと、自分の記録がどう扱われるかがはっきりします。
ランナーがDNSを選ぶよくある理由
実際にDNSを選んだランナーたちは、どのような理由でその決断をしたのでしょうか。
みんながどんな事情で大会を諦めているのかを知ると、「自分だけじゃないんだ」と少し安心できるかもしれません。
1. 直前の怪我や足の違和感
最も多い理由は、やはり怪我や足のトラブルです。「数日前に膝を痛めてしまった」「足裏に違和感がある」といったケースです。
無理して走れば、数ヶ月間走れなくなるような大怪我につながることもあります。将来のために、泣く泣く諦める人は非常に多いのです。
2. 風邪や発熱などの急な体調不良
大会当日の朝、起きたら熱っぽかったり、喉が痛かったりすることもありますよね。マラソンは体に大きな負担をかけるスポーツです。
風邪気味の状態で42.195kmやハーフマラソンを走るのは、命に関わるリスクさえあります。体調不良はDNSを選ぶ正当な理由です。
3. 仕事の都合や家庭の事情
市民ランナーにとって、ランニングは生活の一部ではありますが、全てではありません。急な出張が入ったり、子供が熱を出したりすることもあるでしょう。
趣味で走っている以上、仕事や家族を優先してDNSを選ぶのは、社会人として賢明な判断と言えます。
欠場を決める体のサイン
「少し痛いけど、これくらいなら走れるかも?」と迷ったとき、何を基準に判断すれば良いのでしょうか。
ここでは、医師やトレーナーも推奨する具体的なチェックポイントを紹介します。これらに当てはまる場合は、勇気を持ってDNSを選びましょう。
1. 歩くだけで痛む場所がある場合
走るどころか、歩いているだけで痛みを感じる場合は赤信号です。日常生活の動作で痛みがあるなら、マラソンの衝撃に耐えられるはずがありません。
以下の動作で痛みがあるか確認してみてください。
- 普通に歩く
- 階段を降りる
- 片足でジャンプする
これらがスムーズにできないなら、今回は休むべきタイミングです。
2. 37.5度以上の発熱がある時
体温計の数字も重要な判断材料になります。一般的に、37.5度以上の熱がある場合は運動を控えるべきだとされています。
熱があるときは心拍数が上がりやすく、脱水症状にもなりやすい状態です。スタートラインに立つこと自体が危険だと考えましょう。
3. 首から下に風邪の症状がある時(ネックチェック)
ランナーの間では「ネックチェック」という判断方法が知られています。これは、症状が首から上か、下かで判断するものです。
以下の症状がある場合は走ってはいけません。
- 咳が出る
- 寒気がする
- 関節が痛む
- 全体がだるい
これらは全身にウイルスが回っている証拠です。一方で、軽い鼻水やくしゃみ程度(首から上)なら、様子を見ながら走れる場合もあります。
練習不足で不安な時の考え方
怪我や病気ではないけれど、「全然練習できていないから走るのが怖い」という理由でDNSを考える人もいます。
練習不足で大会に出るべきか迷ったとき、どのように考えれば良いのでしょうか。心の持ち方について整理してみましょう。
1. 完走できる自信が全くない時
「10kmも走ったことがないのにフルマラソンに挑む」といった極端な練習不足の場合、完走できるイメージが湧かないのは当然です。
楽しむ余裕がなく、苦しみだけが予想されるなら、今回は見送るのも一つの手です。マラソンを嫌いにならないためにも、無理は禁物です。
2. 関門時間に間に合わない可能性が高い時
マラソン大会には、通過制限時間(関門)が設けられています。練習不足でペースが上がらず、最初の関門すら突破できない可能性がある場合です。
バスに回収される悔しさを味わうために行くのか、それとも次の大会に向けて練習を積むのか。自分の性格と相談して決めましょう。
3. 無理をして大きな怪我に繋がるリスク
練習不足の状態で長距離を走ると、筋肉や関節に予想以上の負担がかかります。筋力が足りないまま走れば、膝や股関節を痛める確率は跳ね上がります。
「完走できたけど、その後半年走れなくなった」となっては本末転倒です。リスク管理もランナーの大切なスキルです。
決断するタイミングはいつ?
DNSを決めるのは、いつが良いのでしょうか。早めに決めるべきか、ギリギリまで粘るべきか悩みますよね。
実は、決断のタイミングはいくつかあります。それぞれのタイミングでの考え方を見ていきましょう。
1. 大会1週間前の最終調整の時点
大会の1週間前は、最後の調整期間に入る時期です。この時点で大きな痛みが残っていたり、走れる状態になかったりするなら、早めに決断するのも良いでしょう。
早めに決めれば、ホテルや交通機関のキャンセル料を抑えられるというメリットもあります。
2. 当日の朝起きた時のコンディション
「行けるかもしれない」と思って準備していたけれど、当日の朝起きたら体が重い、ということもよくあります。
当日の朝まで判断を保留にしても構いません。朝の体調を見て、「今日はやめておこう」と決めるのも立派な決断です。
3. 会場に向かう途中や整列する直前
実は、会場に着いてからDNSを決めても誰にも迷惑はかかりません。着替えてアップをしてみたけれど、やっぱり違和感があるという場合です。
スタートの号砲が鳴るその瞬間まで、あなたには「走らない」という選択肢が残されています。
大会を休む時の具体的な手続き
いざDNSを決めたとき、事務局への連絡や手続きはどうすれば良いのでしょうか。
多くの人が気にする「連絡の必要性」や「計測チップの扱い」について解説します。
1. 事務局への欠席連絡は必要?
基本的には、事前の欠席連絡は不要な大会がほとんどです。何千人、何万人と参加する大会では、個別の欠席連絡に対応しきれないからです。
当日会場に行かなければ、自動的にDNSとして処理されます。電話やメールを入れる必要はないので安心してください。
2. 手元にある計測チップの返却方法
ゼッケンと一緒に計測チップ(タグ)が事前送付されている場合は、返却が必要です。チップは高価なものなので、返さないと実費を請求されることがあります。
返却方法は以下の通りです。
- 同封されている返却用封筒で郵送する
- 大会会場の「チップ返却所」に持っていく
- 大会事務局へ着払いで送る(要確認)
大会の案内(参加要項)に返却方法が必ず書いてあるので、確認して速やかに返しましょう。
3. 無断で休んでもペナルティはない?
「連絡なしで休んだら、次の大会に出られなくなるのでは?」と心配する人もいますが、そんなことはありません。
無断欠場によるペナルティがある市民マラソン大会はまずありません。次回の抽選に不利になることもないので、気にしなくて大丈夫です。
参加賞やTシャツはもらえる?
楽しみにしていた参加賞のTシャツやタオル。走らないとしても、記念品だけは欲しいと思うのが人情ですよね。
DNSをした場合、これらの参加賞はどうなるのでしょうか。
1. 事前に郵送されている場合はそのまま貰える
最近の大会では、ゼッケンや参加賞が事前に自宅へ送られてくることが増えています。この場合、手元にあるものはそのままあなたのものです。
走らなくても参加賞をゲットできるので、少しだけ得した気分になれるかもしれません。
2. 当日会場で受け取るタイプの大会
大会によっては、当日の受付で参加賞を渡すケースがあります。この場合、会場に行かなければ受け取ることができません。
もし会場が近くて体調が許すなら、応援がてら会場に行き、受付だけ済ませて参加賞をもらうことは可能です。
3. 後日郵送してくれるケースは少ない
当日会場に行けなかった場合、後から参加賞を郵送してくれる大会は非常に稀です。多くの大会では「当日受け取らなかった場合は辞退とみなす」というルールになっています。
着払いで対応してくれる優しい大会もごく一部にはあるので、どうしても欲しい場合は事務局に問い合わせてみても良いでしょう。
参加費の返金はあるの?
マラソンのエントリー代は決して安くありません。1万円以上することも珍しくないため、返金があるかどうかは切実な問題です。
残念ながら、これについては厳しい現実を知っておく必要があります。
1. 自己都合の欠場では返金されない
基本的に、怪我や病気、仕事など、参加者側の都合によるキャンセルの場合、参加費は一切返金されません。
これはどの大会でも共通のルールです。大会側はすでにTシャツや警備費などの準備にお金を使っているため、返金対応は難しいのです。
2. 大会規約に書かれているキャンセル規定
エントリー時に同意した「大会規約」をよく読んでみてください。ほぼ間違いなく「申し込み後の返金は行わない」という旨が記載されています。
地震や台風で大会自体が中止になった場合でも、返金されるかどうかは大会によって対応が分かれます。
3. 権利譲渡枠(ゆずれ〜る等)が使える場合
一部の大手エントリーサイト(RUNNETなど)では、「ゆずれ〜る」という出走権譲渡サービスがあります。
これを使えば、他に出たい人に枠を譲ることができ、手数料を引いた分が戻ってくる可能性があります。ただし、期間が決まっているので早めの確認が必要です。
「勇気ある撤退」という選択
DNSを決めることは、決して恥ずかしいことでも、弱いことでもありません。むしろ、ランナーとしては非常に重要なスキルの一つです。
「走らない」と決めることが、なぜプラスになるのかを考えてみましょう。
1. 長く走り続けるための賢い判断
一時の感情に流されず、自分の体の未来を守る判断ができる人は、長く走り続けることができます。
一度の大怪我でランニング人生を終えてしまう人もいます。そうならないための「賢いブレーキ」こそがDNSなのです。
2. プロの選手でも行う戦略的なDNS
オリンピックを目指すようなトップアスリートでも、調子が悪いときは迷わずDNSを選びます。それは、大事な本番で最高の結果を出すためです。
彼らにとってDNSは「逃げ」ではなく、コンディションを整えるための「戦略」の一つと考えられています。
3. 「逃げ」ではなく「次への準備」と捉える
DNSは敗北ではありません。次の大会で万全の走りをするための、準備期間の始まりです。
「今回は体を休める期間だったんだ」と割り切ることで、気持ちも前向きになれます。この休養が、次の自己ベスト更新に繋がるかもしれません。
次の目標へ気持ちを切り替える
DNSを決めた直後は、やはり悔しい気持ちや残念な気持ちが残るものです。どうすれば気持ちを切り替えて、また走り出すことができるのでしょうか。
最後に、ポジティブに次へ向かうためのステップを紹介します。
1. まずは体をしっかり治すことに専念する
怪我や病気が理由なら、まずは治療に全力を注ぎましょう。「早く走りたい」と焦る気持ちはわかりますが、中途半端に再開すると長引くだけです。
医師の指示に従い、完全に痛みが消えるまで待つことが、復帰への最短ルートです。
2. 応援ナビなどで仲間の頑張りを見る
当日は、家で応援ナビ(ランナーの位置情報アプリ)を見たり、テレビ中継を見たりするのも良いでしょう。
仲間が頑張っている姿を見ると、「次は自分もあの場所に立ちたい!」というモチベーションが湧いてきます。
3. 次のエントリー大会を探し始める
悔しさを晴らす一番の方法は、次の目標を決めてしまうことです。半年後や1年後の大会を探して、エントリーの計画を立てましょう。
「この大会に向けて、今度こそしっかり準備しよう」という新しい目標ができれば、DNSの悔しさはエネルギーに変わります。
まとめ
DNS(Did Not Start)は、単なる「欠席」ではなく、自分の体を守り、将来も走り続けるための「勇気ある決断」です。
足の痛みや発熱などの明確なサインがあるときは、迷わず休む勇気を持ってください。無理をして深刻な怪我を負うよりも、万全の状態で次のスタートラインに立つことの方が、何倍も価値があります。
マラソンは逃げません。まずはしっかりと体を整えて、また笑顔で走れる日を迎えましょう。あなたの次の挑戦を、心から応援しています!

